ゲド戦記のテルーの正体を原作から説明!顔の傷ができた過去やその後も

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漫画・アニメ

ジブリの中でも、異色を放つ作品「ゲド戦記」。

見た人の感想が「よくわからん・・・」というものが多いんですよね。

 

主人公のアレン(レバンネン)や、大賢人ハイタカ(ゲド)など、不思議な力や様々な事情をもっていそうにもかかわらず、その前後が語られることなく・・・

キーマンである、少女テルーもそのひとり。

大きなやけどがあったり、ラストシーンで竜とのかかわりがほのめかされるも、その過去や正体の伏線のようなものも全くなし。

 

そりゃあ、見た人は「?」ってなっちゃいますよね。

 

そこで本記事では、我が家にある「ゲド戦記」の原作を読みなおし、テルーの正体や過去、その後について解説していきたいと思います^^

 

なお、ジブリの「ゲド戦記」は、原作ル・グウィンの「ゲド戦記」にかなりのアレンジが加えられています。

原作でのテルーの設定を知り、映画にはこう生かされているだな~と思っていただければ幸いです

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ゲド戦記テルーの正体は?原作から

(↑私が持っている「ゲド戦記」。外伝までいれると6冊の超大作!)

 

原作において、テルーは竜族です。

竜族の末えいとか、竜族の血が入っている、竜族の仲間だという記事もみられますが、原作では竜族そのものです。

もっと詳しくいうと、竜族の長老であるカレシンの娘になります。

テルーの真の名(まことのな)はテハヌー。

映画のラストでアレンが叫びますね^^

 

ゲド戦記Ⅳ巻「帰還」にこうあります。

カレシンのセリフです。

わしの子供をそなたたちにやるぞ。

~ル・グゥィン, ゲド戦記Ⅳ巻「帰還」,p377,岩波書店~

 

ゲド戦記Ⅴ巻「アースシーの風」にこうもあります。

こちらもカレシンのセリフです。

その昔、我々(人間と龍のこと)は、同じひとつの種族だった。

その証拠に、どの世代の人間たちにも必ずひとりかふたり、竜にうまれついてくる者がいる。

そして、こっちにも必ず各世代にひとりは、人間に生まれてくるものがいる。

~ル=グゥィン, ゲド戦記Ⅴ巻「アースシーの風」,p229,岩波書店~

 

ジブリ「ゲド戦記」のキャッチコピーは、「かつて人と竜はひとつだった」です。

カレシンの言葉からも、このことは原作も映画も一貫しています。

「もとは一つの種族だった。しかし、選ぶ道(優先するものごと)をたがえたことで、竜と人間に分かれた」というのが、原作での設定になっています。

さらに、上の引用のように、「人間の中に『竜』として生まれつくものがいる」と物語では明言されれています。

このことから、「竜族であるが人間に生まれついたもの」それが、テルーの正体になります。

 

ちなみに「テルー」という名前の意味は、ゲド戦記の原作では、「炎をあげて燃える」という意味になります。

テルーの名前は、映画にも出てくるテナーがつけました。

テナーは賢人でもなく、何かをみやぶる力はないはずなのですが、竜であるテルーにぴったりの名前だと思います。

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ゲド戦記テルーの過去は?なぜ顔に傷(やけど)があるの?

テルーは小さいころ、ならずものの宿無しの男性2人と女性1人と一緒に暮らしていました。

この女性「セニニ」という名前の、テルーの産みの母親です。

ゲド戦記Ⅳ巻の最後の方で、この男たちにおなかに赤ちゃんがいたまま殺されてしまいます。

これだけで、この男たちがどういう素性の者たちかよく分かりますね。

(なお、男の片方がセニニの相手、テルーの生物的な父親という設定になっています。)

 

テルーはひどい環境に生まれついたのです。

そして、6、7歳のころ、男たちに性的にひどいことをされ、ひどく殴られ、証拠をなくすためにたき火の中に放り込まれました。

男も母親も逃げていきました。

もっとも母親は男たちに暴力による支配を受けていたので、従わざるをえなかったのかもしれませんが・・・

顔の傷はこの時にできたもので、原作どおりれあればやけどです。

体の半分は火の中に入っていたという記述があります・・・

この経緯は、「ゲド戦記Ⅳ巻 帰還」に詳しく描かれています。

 

大やけどし、生死の境をさまよっていたテルーを看病し、娘としてひきとったのがテナーになります。

ですので、テナーとテルーに血のつながりはありません。

(ちなみテルーはハイタカの本当の娘でもありません。

ハイタカとテルーはのちに事実婚という形になりますが、その時テルーはテナーの連れ子で、ハイタカの養女というかたちになります。)

 

ジブリ映画「ゲド戦記」では、テルーの傷は顔だけになっていますが、原作では違います。

これは大人になってからのテルーにはなりますが、このように表現されています。

顔の左半分はすべすべした銅色(あかがねいろ)で、アーチ形の眉の下には黒い瞳が輝いていた。

だが、右半分はつぶれて、でこぼこした厚いケロイドになり、目はなかった。

右手はカラスの鉤爪のようになっていた。

~ル=グゥィン, ゲド戦記Ⅴ巻「アースシーの風」,p140,岩波書店~

 

また、映画でテルーは歌うことができますが、原作では火をまともにすいこむところに捨て置かれたため、のどの中もやけどし、非常に聞き取りにくい声となっています。

原作では、テルーの声は、金属がこすれあうような」という表現がしばしばみられます。

子どもの声は金属板に金属ブラシをかけたようだった。

かわいた葉のこすれあう音のようでもあり、火がシューシューと燃える時の音にも似ていた。

~ル=グゥィン, ゲド戦記Ⅳ巻「帰還」,p313,岩波書店~

 

テルーがひどいことをされた、ゲド戦記Ⅳ巻「帰還」では、「奪われる」ことも物語の一つのテーマになっています。

ジブリ「ゲド戦記」では、そのテーマはなかったように感じますので、テルーのやけどをそこまでひどく描く必要がなかったのではないででしょうか。

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ゲド戦記テルーのその後は?アレンと結婚したの?

テルーはアレンと結婚はしません。

また、テルーは、ゲド戦記Ⅴ巻「アースシーの風」の最後の方で、竜のいる西のかなたへ竜となって飛んで行き、「竜」となって生きることを選びます。

 

さきほども書きましたが、テルーの真の名はテハヌー。

下は、ゲド戦記Ⅴ巻「アースシーの風」からの引用です。

テハヌーは両手を高くあげた。

炎をが手を走り、腕を走り、髪の毛に入り、顔に入り、その胴体に入り、大きな翼となってその頭上に燃え上がると、テハヌーの体が宙に浮いた。

全身火と化した生き物は、今、空中に美しく光り輝いていた。

テハヌーはことばにならない、澄んだ叫び声をあげると、首をのばして、高い空へと、まっしぐらに飛んでいった。

(中略)

あちらでふたり、こちらで3人と、テハヌーのように、炎と燃えて竜に姿を変え、風に乗るものがあらわれた。

~ル=グゥィン, ゲド戦記Ⅴ巻「アースシーの風」,p360-361,岩波書店~

ジブリ映画「ゲド戦記」と原作では、かなり設定が違います。

 

アレンとの結婚は?と考えしてしまう理由の一つは、映画ではアレンとテルーの年が近く、かつ、アレンは竜となったテルーに命を救われ感謝の気持ちをもつからですよね。

そして、この気持ちからいつか恋が芽生えるのでは?という、見た人の期待があるのではないかと思います。

 

まず、原作では、アレンとテルーはかなり年が違います。

テルーがテナーに引き取られた6、7歳のころの同じ時、アレンはおそらく10代後半。

10歳以上の年の差があります。

 

もっとも結婚となると10才差くらい、という方もいらっしゃると思いますが(笑)

 

そして、映画でテルーが竜となって、アレンやハイタカやテナーを助けるシーン、これ実は原作には全くありません。

ジブリ映画のハイタカとテナーが突き落とされそうになる場面は、ゲド戦記Ⅳ巻「帰還」にありますが、ここにアレンは出てきません。

アレンはこの時すでに王様であり、いるべきところにいる、テナーたちと全く住む世界が違う人になっています。

(しかし、アレンはハイタカに恩や尊敬を感じており、住む世界が違う中でもいつか会いたいと思っています。)

 

そして、映画のようにハイタカとテナーが絶体絶命のピンチになった時、原作ではハイタカとテナーは、テルーにではなく、カレシンに助けられます。

テナーが助けを呼ぶためカレシンを呼ぶのです。

 

アレンの結婚相手は、原作の話の流れから察するに、違う国の王女様(セセラク)になりそうです。

 

その他の登場人物である、ハイタカやクモの正体や過去については、別記事で詳しくまとめてあります。

興味のある方はご覧くださいね^^

 

テルーだけでなく、ハイタカ、クモにも違う設定がたくさんあります。

原作と映画ではこんなに違うところがあるんだ、と思っていただければいいかと思います。

 

ゲド戦記の映画と原作の違いについては、こちらで詳しくまとめています。

興味のあるかたは是非どうぞ^^

 

原作が読みたい方はぜひこちらを。

アレンがハイタカと旅をするお話は、「ゲド戦記Ⅲ さいはての島へ」に。

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テナーやテルーが登場し、ハイタカとテナーが捕まるお話、これは「ゲド戦記Ⅳ  帰還」に書かれています。

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まとめ

ゲド戦記テナーの正体は、竜族。

詳しくいうと、竜の長老カレシンの娘です。

 

テルーには、悲惨なところに生まれつき、ひどいことをされた過去があります。

顔の傷はその時にできたのもので、この経緯は原作「ゲド戦記Ⅳ巻 帰還」にあります。

 

ゲド戦記のテルーのその後については、最終的に、テルーは竜になり西の空で竜として生きることを選びます。

テルーとアレンは結婚はせず、アレンはよその国の王女と結婚するはこびとなりそうです。

 

 

 

コメント

  1. アオサル より:

    とてもわかりやすい解説でした。
    解説の中で、テルーが「竜族であるが人間に生まれついたもの」であると分かりましたが、テルーの母親と父親もまた「竜族であるが人間に生まれついたもの」という事ですか?
    アースシーの世界では、竜族なのに人間に生まれたものは人間の世界で生きていかなければいけないという事でしょうか?

    • pingeeee_ssk より:

      アオサル様

      コメントありがとうございました。
      >テルーの母親と父親もまた「竜族であるが人間に生まれついたもの」という事ですか?
      については、ゲド戦記の原作にはなんの記載もありません。

      ゲド戦記を読んだ私の個人的な感想なのですが・・・
      「竜族」は親が竜族など関係ないのではないかと思います。
      というのも、もし竜族に生まれた親も竜族で、その流れが綿々と受け継がれているのならば、「竜」になれる人間はものすごい数いると思うのです。
      しかし、物語り全体を読む限りそんなような感じは全くないです。
      (竜族はごくごく少数。)
      私たちが考える「遺伝子」や「子孫」とは全く異なるシステムが動いているように思います。

      表現がこれで正しいのかは迷うところですが、「竜族になれるなんらかの因子」のようなものを「なぜか突発的にもっているもの」、それが人間に生まれた竜族なのかな、と思っています。

      >アースシーの世界では、竜族なのに人間に生まれたものは人間の世界で生きていかなければいけないという事
      そう解釈してよいと思うし、私もそう解釈しています。
      あくまでテルーの場合はですが、テルーは自分が竜族であることは自覚していませんでした。
      (自分に何かある、ということは少し感じていたようですが。)
      なので、そういう「竜族なのに人間に生まれたもの」はテルーと同じような感じで、「竜族」と気づかず一生を終えるのかな~と思っております。

      ご返信が遅くなって申し訳ありませんでした。
      拙文を読んでいただき、コメントまで頂けるなんて本当にうれしいです^^
      また何かありましたらコメントいただければ幸いです。

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