柏葉幸子作品「岬のマヨイガ」が2021年に映画化されるということで、その原作のあらすじをまとめました。
その際、「柏葉幸子は『霧の向こうの不思議な町』も書いている」と述べました。
「霧の向こうの不思議な町」は、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」の下地になったと言われる作品です。
私、この両作品が大好きで。
前者は小学校の時からのファン、後者は3回ほど映画館に足を運びました。
(千と千尋を見た時は、「うん?なんか霧の谷に似てる?」と思いました^^)
今回そんな私が、「霧の向こうの不思議な町」と「千と千尋の神隠し」の共通点をまとめてみました。
(以下ネタバレあります。注意。)
『霧の向こうの不思議な町』も『千と千尋の神隠し』もテーマは「少女の自立」。
「霧の向こうの不思議な町」の主人公は小学六年生のリナ。
物語は夏休み中のリナが道に迷うところから始まります。
山で道に迷い、ピエロの傘に導かれ、着いた先は霧の谷の「きちがい通り」でした。
道案内のピエロの傘が着いた先は、霧の谷の下宿屋。
下宿屋の主人、ピピティ・ピコット(通称;ピコットばあさん)は、「働かざるもの食うべからず」がモットー。
滞在費にお小遣いを出そうとするリナに、「自分で働いて稼いだお金じゃなきゃいらない」と言い放ち、リナに気ちがい通りの様々なお店を手伝うように命令するのです。
今まで自分の生活費を稼ぐために働いたことのないリナ。
そして働く場所は、魔法使いの子孫が住む霧の谷。
リナは、そんな初めての不思議な場所で、みんなの助けを得ながら、とまどいつつも一生懸命働きます。
「霧の向こうの不思議な町」では、着いた時は気弱で引っ込み思案リナは、自分の意見をしっかりもった芯のある女の子へと成長していきます・・・
いかがでしょう?
「千と千尋の神隠し」に似ていませんか?
「千と千尋の神隠し」は、小学4年生の千尋が、お父さんとお母さんを助けるために湯婆婆と契約を結び、「湯や」で働く物語です。
そこは、神様の温泉場のある不思議な世界。
千尋も、不思議な世界に戸惑いながら、働きながら、そして一人の大事な人を助けるという強い気持ちから、たくさんの成長をとげていきます。
目的は違えども、描かれるは少女が困難に立ち向かいながらもたくましく成長していく姿です。
なお、「霧の向こうの不思議な町」でも「千と千尋の神隠し」でも、主人公の髪型はポニーテール。
リナと千尋がなんとなーく重なって見えてしまいます^^
『霧の向こうの不思議な町』も『千と千尋の神隠し』も特筆すべきは「おばあさん」
「霧の向こうの不思議な町」に出てくるピコットばあさん。
口が悪くて、思ったことを歯に衣きせず言い放つ。
反論しようとすると「なんて言ったんだい」と、有無を言わさず相手を口をふさぐ。
畑に立ってればカカシがいらないじゃないか、という威圧感。
リナだけでなく、下宿屋にいるみんなが、より集まっては愚痴をこぼします。
い~いキャラクターしてます^^
そんなピコットばあさん、最初リナが会った時、「ソファーのしみみたい」と思った、背の低さ。
服は黒いワンピースに白い前掛け。
髪は見事な銀髪を結い上げ、ぐるぐると頭に巻いているので、ひときわ頭が大きく見える、そんな風貌です。
ん?「千と千尋の神隠し」にも似た人でてきません??
そう、湯婆婆とピペットばあさんはよく似ているのです!
湯婆婆は前掛けはしていませんし、ピコット婆さんは顔そのものが大きいわけではないのですが。
口が悪いのも、威圧的なのも、背が低いのも、頭が大きく見えるのも。
そして、物語の中でリナ(千尋)を叱咤する重要な役であるのも。
両方の物語での重要人物が「おばあさん」であるのも、共通のポイントです^^
『霧の向こうの不思議な町』のある魔法の場面が『千と千尋の神隠し』にも登場する
「霧の向こうの不思議な町」でも「千と千尋の神隠し」も魔法や術の生きる不思議な世界が舞台です。
そんな2つの世界で共通するシーン、それが「様々な花が咲く生垣」です。
「千と千尋の神隠し」では、ハクに手を引かれて千尋が何種類もの花の間を走っていくシーンがあります。
この、「様々な花」というのがポイント。
「霧の谷の向こうの不思議な町」ではその季節ではない花を咲かせることのできる発明家がいます。
その発明家の名前はイっちゃん、もちろん魔法使いの子孫です。
「どんな季節も色んな花が見たい」というピコット婆さんのわがまま(?)から、イっちゃんは、毎日ストーブにせっせせっせと石炭をくべます。
そして、下宿屋での仕事の一環として、様々な花の見事な生け垣を、下宿屋の庭に作っているのです。
「霧の谷の向こうの不思議な町」に出てくる美しい生け垣が、「千と千尋の神隠し」の重要なシーンで重なります^^
『霧の向こうの不思議な町』の様々な部分が『千と千尋の神隠し』に重なるのは確か
「千と千尋の神隠し」は「霧の向こうの不思議な町」からヒントを得たともいわれています。
全体を通してみる限り、物語の雰囲気はずいぶん違います。
「霧の向こうの不思議な町」はどちらかというと洋風。
赤やクリーム色の家。
石畳の道路。
髪の色もいいろんな人がいて、なに人かわからない。
一方、「千と千尋の神隠し」は、和風テイスト。
日本の神様てんこ盛りです。
そんな2作品が、テーマや主な人物の切り口で見ると、やはり似ているものに見える、面白いですね。
両作家のすごさを思い知らされます。
「日常」と「不思議」を練り上げて、ファンタジー作品を作っていくのが柏葉幸子作品。
ぜひ「霧の向こうの不思議な町」、読んでみて下さいね!
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